
出版関係の仕事をしている人の話に出てくる級(Q)って何?
2025.9.12/デザイン
出版関係の仕事をしているデザイナーや編集者のような人の話を聞いていると「級」という謎の言葉が出てくることがあります。開いた本のページを指差して「これ、本文を11級じゃなくて13級にした方がずっと読みやすいのに」のようなはなしをしているのを聞くとどうやら文字の大きさの単位の話をしているのはわかるのですが、Microsoft Officeの解説本をひっくりかえしても「級」のはなしは出てきませんし、今のツールのほとんどはポイント対応です。たとえばAdobe Illustratorのようなプロ向けのデザインツールでもポイントがメインになっていて、単位を級に切り替えたくてもすぐには選択できないようになっています。
そんなミステリアスなオーラを放つ「級」について、少し語ってみようと思います。
「級」は日本の出版・印刷で使われている、文字の大きさの単位です
「級」は写植の時代から日本の出版や印刷の分野で使われてきた、文字の大きさを計る単位です。(その「写植」とは何だ?と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、このブログの担当者は写植を覚えている最後の世代の一員なので、いつか、TRUSNEXのブログで説明したいと思っています。)
1級は0.25mmで、例えば12級の文字だと高さが3ミリになります。日本語の文字は伝統的に正方形ですので、高さが3ミリだと幅も3ミリになります。DTPが始まる前の写植を使ったワークフローでは「このスペースには一行何文字が入り、何行入るのか」を計算してから文字組を写植屋さんに発注しなければいけなかったので、級が日本の出版と印刷の世界のスタンダードになりました。
このブログの担当者は以前、出版社から書籍の組版の仕事を受けていた時期があり、Adobe IllustratorやAdobe InDesign(Adobe InDesignが発売される前は、今ではすっかり見かけなくなったQuarkXPressというソフトを使っていました)の単位を業界の慣習にならって級にしていました。
なぜ、級を使うのですか?
「そんな写植時代に必要だった文字数計算なんてデジタルで組版をする時代には必要がないので級なんかよりポイントを使った方がよいのでは?」という意見があるかもしれませんが、業界の慣習やクライアントの要望に応えるために級にするということ以外にも、日本の出版物の本文の大きさはおおむね11級から13級で、見出しは20級、24級……という具合に「読む側が見なれた定番」があり、「読者に自然な印象を与える日本語組版」を目指したければ、級を採用した方がベターだということができます。文化を継承させるのは、こういう慣習の継続です。
級とポイントを比較するとどうなりますか?
級(Q) | ポイント(pt) | |
基準となる単位 | メートル法(1Q=0.25mm) | ヤード・ポンド法(1pt=1/72インチ=0.3514mm) |
発生地 | 日本 | 欧米 |
立ち位置 | 日本の伝統(出版業界では一般的) | 世界標準 |
デジタル対応 | 限定的 | 完全対応 |
将来性 | なくなることはありません | 拡大中 |
これだけを見るとポイントの方が優位な位置にあるのが明らかですが、たとえばInDesignはデジタル対応が限定的だといわれる級と関連の設定を積極的に採用していて、日本語組版を極めるデザイナーに重宝されています。
長い歴史を誇る日本語組版は今でも進化を続けていて、それに最適化された級は今後、なくなることはないと考えられます。
美しく、且つ合理的な日本語組版に関心を持ちましたらぜひ、級と関連の設定を試してみてください。
《おまけ》なぜ、級は「Q」と表記されるのですか?
級は「24Q」という風に「Q」と表記されることが多いのですが、1級=0.25mm、つまり、1mmの1/4であることから、「4分の1」を意味するQuarterの頭文字であるQ(キュー)からきたといわれています。
TRUSNEXではグラフィックデザインから、web制作などデザイン全般のご相談を承っております。グラフィックデザインにおいて大きく且つ重要な役割を果たす文字組(タイポグラフィ)にも真剣に取り組んでいます。お気軽にご相談ください!
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